コンビニの24時間営業を巡る問題で5日、コンビニ8社のトップに対して人手不足の対応策やオーナーの処遇の見直しなどを求めた世耕弘成経済産業大臣。「たとえば人手不足を感じている経営者の方々が(2014年の)22%から61%に激増している」「どのようにしてオーナーさんと共存共栄する形で対応して、社会インフラとしてのコンビニを維持発展させていくのか」と問題提起した。
議論のきっかけとなったのは、今年2月、人手不足を理由に営業時間を短縮したセブンイレブン加盟店(東大阪市)のオーナーが本部と対立していることが報じられたことだった。同店では過労死寸前となったオーナーが営業時間を19時間に短縮。すると本部から1700万円の支払いやフランチャイズ契約の解除を言い渡されたというのだ。
そんな中、セブンイレブン・ジャパンは4日、社長交代を発表。新たに就任した永松文彦社長は「地域の商圏に合わせた商品の品揃え、サービス、そして営業時間の柔軟な対応を図ってまいりたいというふうに考えている」とコメント。直営10店舗などで時短営業の実験を始めるとしているが、親会社であるセブン&アイHDの井阪隆一社長は「24時間営業はセブンイレブンのビジネスモデルの根幹をなしてきたことは事実。柔軟に対応するということがすなわち24時間営業の選択制に繋がるとは考えてない」と、24時間営業が基本だとの考えを示している。
この問題を取材してきた弁護士ドットコムニュースの新志有裕編集長は「通常、労働問題は企業と従業員という構図の中で出てくるが、コンビニの場合は本部とフランチャイズオーナーという異なる構図の中で紛争が起きていたので注目していた。その中で東大阪でのトラブル話を聞き、ぜひ取り上げていこうと取材した。私たちのところにも、"24時間でなくてもいいのではないか"という一般の利用者の声が数多く寄せられている。風向きが変わったことで、セブンイレブン側も軟化に切り替わったのではないか」と話す。
他の大手コンビニも同様の問題を抱えているとみられ、無人レジや無人コンビニなど、IT化によって人手不足を補おうとする実験にも取り組んでいる。
大手コンビニチェーンで十数年間オーナーをしていたというAさんは「やはりアルバイトやパートが休んだりすると、全てしわ寄せがオーナーにくる。空いたシフトは自分で埋めないといけないので、人が確保できないときが一番しんどかった。夜中もやって、その日の午後10時くらいからまた入って、その日も深夜やって…ということを週6日で続けたときは、精神的にも肉体的にもしんどかった。コンビニでできるサービスがどんどん増えていくので、従業員に教えていかなくてはいけない。学生アルバイトがメインだと、週2、3日くらいしか来ないので、次に来た時には忘れてしまっていて、クレームに繋がることがよくあった」と明かす。
コンビニでアルバイト経験のあるふかわりょうが「深夜は雑誌や食べ物の搬入があるからスタッフがいなくちゃいけない。スタッフがいるなら営業もしようという発想があるのでは?」と尋ねると、Aさんは「それはあると思う。深夜はお客さんを相手にするよりも、納品物を片付けたり、掃除をしたりといったオペレーションが非常に大きいので、その合間にお客さんが来たら対応するという感じだ。だから売上は日中に比べるとほとんどないし、特に冬場は1時間に1、2人という時も多い。開けているだけの価値はあるのか、疑問に思う。24時間営業店も必要だとは思うが、それは駅前の繁華街や大通りに面した場所であることや、人が確保できるという前提があってのことだと思う」。
夜中に利用することも多いという慶應義塾大学の若新雄純特任准教授は「24時間営業にしても儲る店とそうでない店があるはずだし、全店舗が24時間営業でなくてもいいと思う。ただ、そこには消費者の24時間やってるもんだろうという傲慢もあって、行く前に開いてるかどうか調べないといけないとう不便さも出てきてしまう」と指摘した。
ファミリーマートは東京や秋田、長崎などの270店舗を対象に、時短営業の実験を行い、フランチャイズ店の売り上げへの影響などを検証。ローソンは全国の加盟店のオーナーらと24時間営業の是非を含めた意見交換会を開催。ある加盟店オーナーの女性は「現場のオーナーたちは3年とか5年ではなく、今、今日をどうにしかしてほしいと思っている」、別のオーナーの男性からは「どう考えても24時間絶対やらなきゃいけないものだとは思っていない。それは、私はケースバイケースだと思っている」などと訴えた。
こうした"生の声"を聞いたローソンの竹増貞信社長は決算発表の席で「時短営業を求める店舗があれば応えていく」とした上で「基本は24時間。ただしそれをしっかりやるべくデジタル投資をガンガンやっていく。ただし1万4500店舗、いろんな事情がある。そこについては今後もしっかりと丁寧に向き合い続けていくと、そういう方針でやっていきたい」と語った。
週刊東洋経済編集長の山田俊浩氏は、「外食産業での24時間営業やワンオペ問題がある中、コンビニは比較的優等生的で、問題が少ない方だったはず。それがなぜこうなってしまったのか。背景には業績の話もあると思うが、やはり店舗が飽和状態になっていて、もう耐えられないという面があると思う。フランチャイズというのはすごく微妙なネットワークの仕組みなので、例外を作ってしまうと効率が落ちてしまう。それゆえに意地を張っている状況なのだろう。『週刊東洋経済』でドン・キホーテの特集を作ったが、商圏をきめ細かく見ながらやっていて、実は繁華街の店舗を除いて、ほとんどが24時間営業ではない。大原社長は"それが当然でしょ"と言っていたが、それができるのは、全て直営でやっているからだ」と話す。
「結局、従業員の満足度が高くない会社は人が集まらないし、継続できない。外食で起きたバイトテロも、やはり働いている人の不満があったのだろうし、それは何らかの形でお客さんへのサービスにも影響を与えてしまう。セブンイレブンの本部もそれは十分に認識しているので、社長を交代させ、急ピッチで体制を整えていくということだろう」。
新志氏は「コンビニ各社がよく言うのが、"社会インフラ"として常に開いていることが大前提のサービスだということ。ずっと開いていることがコンセプトにしたサービスということで今までずっと続いてきた。ただ、これだけ"働き方改革"が注目されていることとも連動しているが、個々のオーナーに事情があるので、それらを汲み取った形で持続的に運営できるようにしていかなければいけないと思う。働く人にとっていいことは消費者にとってもやっぱりいいことなんだ、という風潮ができていくと、また変わってくると思う」と指摘した。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)
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