「選挙に科学を」維新圧勝のメカニズムを三浦瑠麗氏と足立康史氏が分析 カンニング竹山「自分たちの地域のことは自分たちで決める時代に」

 負ければ大阪都構想の夢が潰えるかもしれないという中、府知事だった松井一郎氏と大阪市長だった吉村洋文氏がそれぞれ市長選、知事選に挑んだ大阪ダブルクロス選挙。圧勝という結果を受け松井氏は「自民党、公明党もこの結果をどう受け止められるか。ご意見を伺いたい」と皮肉交じりに話した。

 夏に参院選を夏に控える中での大阪維新の大勝。自民党の二階俊博幹事長は「謙虚にこれを受け止めたいと思っている。敗因を分析し、次なる戦いに備えていきたい」とコメント、公明党の山口那津男代表も「大阪特有の状況があったと思う。維新の勢いがあったということも見据えながら、今後体制を立て直して頑張っていきたい」と話している。

 国際政治学者の三浦瑠麗氏は、選挙結果を検討すると各社の事前情勢報道とは違った様相が見えてくると話す。

 「各社の電話調査の結果を受けた報道を見ると、少なくとも松井さんについて序盤は"かなり接戦"とされていて、中盤になると松井さんが"5ポイントリード"、吉村さんは"10ポイントリード"というようなものだった。しかし実際の投票行動が反映される出口調査の結果では20ポイントもの差がついたことが分かった。なぜ間違えたのか、なぜ松井さん、吉村さんに投票したのかを総括しないといけない」。


 さらに三浦氏は「日本の選挙には、もう少し科学を持ち込まなければいけない。何かの支持層ではなく、過去の投票行動を見るべきだ」と指摘する。

 「例えば"自民党支持層"だと言われている人たちについて言えば、2017年の衆院選では自民党に入れたかもしれないが、大阪の住民投票や今回の選挙では継続的に維新に入れている。本当にこの人達を"自民支持層"だと言っていいのだろうか。大阪にでは自民支持層、維新支持層という区分自体、合わないのではないだろうか。また、特に大阪は都会なので浮動票が多く、ガチの維新支持層、あるいはガチの反維新層は限られている。その浮動票が何を考えているかも本来は読み取らないといけないが、新聞社による調査は"社会保障、医療、教育の中でどれを重視しているか?"といったゆるい質問になりがちだし、有権者もよく考えずに、何となく回答しているだけ。"教育"と答えた人が、維新やその対立候補の教育政策を見ているかと言えば、そうでもない。私が調査した結果では、浮動票は維新以外の明確な方向性を向いていなかったし、うまくいった維新の政策についてはガチの反維新層も部分的には支持していた。そうすると、松井・吉村路線でいくのか、あるいはそれ以外でいくのかになるが、そこで明確な"それ以外"になりうる選択肢が浮動票にも反維新層にも無かった。戦略負けだ」。

 その上で三浦氏は「維新のうまいところは、"10年前に戻さない""二重行政の解消"、あるいは"万博"というシンプルなメッセージ、キーワードに絞った。こうしたワードが維新支持との相関性が高い一方、"高校無償化"や"報酬カット"などについては良いねと思っても投票には結びついていない。有権者は民営化という抽象的な言葉に怖いというイメージを持ったとしても、交通インフラが便利になったとか、公務員の対応がよくなったという具体的なことに基づいて政策を支持する。維新支持層というのは民営化を理解して付いていっている人だし、そのフォロワーになった浮動票はこの4年間での景気実感や改革実感を持ったのだと思う」と分析した。

 日本維新の会の足立康史衆議院議員は、「大阪維新は地下鉄民営化や駅のトイレを綺麗にするところから始まり、私立高等学校・幼児教育の無償化、最近でいうと万博の誘致・IRと、大阪を盛り上げていくためにありとらゆることをやってきた。よく維新の会は"身を切る改革"と言うが、政治を前に進めるために"報酬カット"など、票には繋がりにくいかもしれないし、評判も悪いことも含めてやってきた。それが全体の結果につながったと思う」とコメント。「橋下さんが敬老パスを有料化するなどしたので、高齢者層の支持は今も高くはないし、かつては僕が大阪に行くと"年寄りいじめ"とヤジを飛ばされた。それでも4年、8年と実績を見てもらって、一旦離れたような人たちも戻ってきていると思う」と話した。


■維新が国政選挙で党勢を拡大するためには何が必要なのか?

 他方、三浦氏は「言っておかなければいけないのは、維新のコア支持層が子持ちの男性に偏っている」とも指摘する。


 「子どもの将来を考える、子育て中の人からの支持率が高いし、維新の会ができた経緯や"改革"という大文字のイメージ、橋下さんのキャラもあって、男性の支持率が高い。今後も浮動票を得て勝つためには、やはり支持層以外が何に動くのかをしっかり分析しないといけない。一般的な政策について、維新支持との相関分析をしてみると、憲法、民営化、集団的自衛権、株価など、経済と安全保障でナショナリズム寄り、リアリズム寄り。国政では自民党を支持していたり、気分で揺れ動く人は経済・安全保障については保守寄り。そういう人しか惹きつけられていない。その意味では、地方では維新に入れてくれるかもしれないけれど、参院選、衆院選でも維新の候補に入れるかなると、そうでもない」。

 これに対し足立氏は「確かに維新にはある種のマッチョなイメージが付いているので、今回はそれがあまり意識されすぎないように気をつけた。今まで"4つの選挙マシーン"と呼んできた、自民党の後援会組織、公明党、共産党組織、労働組合のような古い既存団体に依存した政治ではなく、声なき声をちゃんと拾っていくということをメインに考えている。そういう意味では特定の支持層ではなく、ウィングを広げていくというのは当然のことだ。ただ、維新の会はもともと自民党が割れてできたので、自民党AとBが戦っているようなものだった。今、それに対して野党が低迷しているので、昔の民主党に期待を寄せていた方も期待されるような政策を打ち出していく必要がある。今までは結局、万博も誘致しないといけないし、IR法も仕上げないといけなかったので、自民党の補完勢力と言われるようなこともあった。ここからは"被っていた猫"を脱ぎ捨てて、"ニュー維新"で支持拡大を狙いたい」との認識を示す。 「今度の12区補欠選挙がまた大変な選挙だ。自民党と維新の会の一騎打ちに、共産党が看板を下ろして出てくる。国政における与党、維新、野党のせめぎ合いの焦点になるので、ここでしっかりと勝利して、その先につなげていく」。

 また、維新のイメージを形作ってきた橋下徹氏の存在抜きで今後も戦い続けるのかと尋ねられた足立氏は「それは橋下さんのみぞ知ること。僕らは期待せず、僕らの力でのし上がっていきたいと思っているし、もし将来また戻ってきてもらえれば、ますます鬼に金棒になってくる。安倍政権が続いている間に橋下さんが出てくることは考えにくい。ポスト安倍がどういう政治体制になるか見えていないので、混乱する可能性がある。そこで維新なり、橋下さんの役割が改めて出てくる」との見方を示し、三浦氏は「維新は組織票はないが、組織としては機能を発揮した。今回の市議、府議の立て方は見事。橋下さんについては、安倍政権と維新の関係が問題で、安倍政権が改革保守の旗印を掲げている間は橋下さんが出る感じはしない」との見方を示した。

 大阪のテレビ番組に出演、15年くらい通っているというカンニング竹山は都構想にも賛成だといい、維新の勝利について次のように話す。

 「今までは国政と地方の自民党が繋がっていたが、これからは中央の政権がそのまま地方につながるかといかと言えば、そういう時代じゃなくなる気がする。僕の出身の福岡でも、あれだけ麻生さんが強いと言われながら、対する小川さんの方が勝った。テレビだけではなくネットが出てきて情報の選択の幅が広がったので、中央に対して、自分の地域はどうなのかということを考えられる時代になってきていると思う。野球で言えば、昔は日本中が巨人だったけど、今は人気が中央のチームに偏らなくなっているし、サッカーもJ1・J2が盛り上がっている。情報が出てきている。ただ、今回の選挙に関しては、維新が勝ったのではなく、都構想を言った松井さん、吉村さんに乗ったということで、みんなが維新を応援したかと言われれば、そうじゃない気もする。夏の参議院ではまた野党が負けると思うが、だからといって維新が勝てるとは限らないのではないか」。


 足立氏は「地域のために働く政党があれば維新でなくても良い。今は中央集権の枝葉なものしかないところに、そういう地域に根を張った政治グループが大阪以外にもできてくれば、日本の政治も変わってくると思う。中央で決めていた時代が終わり、地域がそれぞれで決めていく時代が始まる。それの突破口になっていく。今までは東京のメディアが作ってきたピラミッドだった。国会議員が偉そうにしていて、地方を支配してきた。そういう時代は終わりにして、それぞれの地域で支持されるグループが集まり、国の方向を決めていく。ピラミッドから逆三角形の地域が支えるようなものにしていきたい。大阪では橋下さんが知事になってから11年、地域政党を作って9年、国政政党を作って6年。それくらいかかってここまできた。日本中の色々な地域でそういう胎動があるかもしれない。それが具体化していくのにはこの先10年ほどかかるかもしれないが、それをやらないと、いつまでたっても古い体制のままだ」と訴えていた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)


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