天文好きの無口な深月(みづき)と、明るくチャラめな秀才の泰陽(たいよう)。タイプが違う少年ふたりの間で、平凡な女子・早乙女星(さおとめ・せい)が揺れ動く――。3人の関係をロマンチックに描き、累計発行部数120万部を突破したコミック『4月の君、スピカ。』が、待望の映画化。平凡だが明るくまっすぐな主人公・星を演じるのは、福原遥だ。「クッキンアイドル アイ! マイ! まいん!」の柊まいん役でブレイクし、昨今は女優として活躍。「3年A組―今から皆さんは、人質です―」(以下、「3A」)での演技も話題の福原が、少女漫画原作映画の初主演を務める。ドキドキしたシーンから共演者との交流までたっぷり語ってもらった。
髪を切ったことで、スイッチが入りました
――このお仕事の話がきたときの気持ちを教えてください。
福原:ラブストーリーで、映画で主演とていうのが初めてだったんです。原作者の杉山(美和子)先生も、大谷(健太郎)監督も、ご一緒させていただきたかったので最初はうれしい気持ちでいっぱいでした。ただ、お客さんが一番追いかける主演という役割が自分で大丈夫か、すごく不安になってしまった時期があって……。
――プレッシャーがあったんですね。
福原:でも、監督や共演者の皆さんと顔合わせをしたら、「みんなで作っていこう」っていう感じがすごくあって、監督が「現場で感じたものを、そのままやってくれればいいから」と包み込むように言ってくださったので、そこからはもう楽しい気持ちでいました。
――福原さんから見て、演じた早乙女星はどんな女の子でしょうか?
福原:星ちゃんは、自分の気持ちに素直。思っていること、感じていることを、自身でちゃんと受け止めることができる女の子です。そこが一番の魅力なんだなって思います。それと、可愛らしくて、私から見ても助けてあげたくなる子。すごくまっすぐで素直なものを内に秘めた、キラキラしている子です。
――星は17歳。福原さんとは年代も近い役柄ですが、ご自身と共通するところは?
福原:似てるなって思ったのは、占いを信じているところ。私も普段、テレビで占いを見て、「今日はいい日!」と言っているので(笑)。あと、星ちゃんも私も乙女座なんですよ。そこに運命を感じました。
――逆に、星とご自身が違うなと思う点は?
福原:星ちゃんは心に素直。ちゃんと自分の想いがわかっていて、相手に伝えられるんです。大人になると、思っていることを言えなかったりするじゃないですか。そこは自分ができていないところかなと思います
――役作りのために何かされましたか?
福原:ふだん作品に出演するときは、私は自分でいろいろ決めてから現場に行くんです。ただ、『4月の君、スピカ。』では、顔合わせのとき、スタッフさんから「そこまで固めずに来た方がいい」と言われていました。なので、あまり自分で決めずに現場に行きました。あとは、ショートカットにしました! こんなに短くしたのは、実は人生ではじめて。(原作コミックの)星ちゃんと同じ長さまで切ることができたことで、自分の中でスイッチが入りました。すんなり作品に入れたので、よかったなって思っています。
お芝居をしていても、すごくキュンキュンしました
――髪といえば、ポスターにもなっているメインビジュアルで、泰陽が星の髪をクルッとつまんでいます。これを“つまくる”と呼ぶと聞きましたが……?
福原:あのビジュアルは、原作コミック3巻の表紙を再現したんです。忠実に、みんなでどれだけ同じにできるか挑戦しました。泰陽役の(佐藤)大樹君がずっと「つまめないよー」「毛の量がわかんないんだよー」って困っていて(笑)。「つまんで、クルっだよ!」ってスタッフさんが言ったら、「ああ、“つまくる”ねー」って。たぶん、そこで言葉ができたんです(笑)。それを流行らせていこうよって!
――そんな由来が!
福原:“つまくる”は、女性がされたら、キュンとしますよね。きっと原作者の杉山先生もそう思って描かれたのかなと思います。男性には、大切な人にぜひやってほしい“つまくる”です(笑)。この前、友達が「SNSに“つまくる”をやってプリクラ撮った写真がアップされているよ!」と教えてくれたんです。ほんとにやってくれてる! って大感動でした。
――たしかにキュンとするかもです。
福原:ね、いいですよね! なので、もっと流行らせて、映画館で作品を見ているときも、隣の人の髪を……(笑)。それぐらい、流行らせていこうって言ってます。
――“つまくる”以外にも、作品にはドキドキするシーンがたくさん出てきます。福原さんがプライベートでこれをされたらキュンとする! と思ったシーンは?
福原:体育館にみんなが集まっているところで、泰陽が星ちゃんに告白するシーンがあるんです。そのとき、泰陽が星の手を取って、自分の胸に当てるんです。そのシーンは、お芝居していてもすごくキュンキュンしました。相手の心臓の音が聞こえるから、すごくドキドキするんですよ! 「好き」っていう思いが伝わる瞬間は、ドキドキするんだなって……。憧れですね。
――物静かな美少年・深月、チャラくて強引だけどまっすぐな泰陽。星はまったくタイプが違う男性ふたりの間で揺れ動きます。ズバリ、福原さんが選ぶとしたら?
福原:私、泰陽くんです。ちゃんとストレートに気持ちを伝えてくれるところや、なんでも言い合える幼馴染っぽい仲っていうのもすごく楽しそう。演じていても、楽しくて落ち着きました。
――物語は天文部が舞台。福原さんは高校時代、何か部活はやっていましたか?
福原:吹奏楽部でした。土日も練習があって、朝練も放課後の練習もやって練習漬けでしたね。みんなで腹筋したり、走ったり。そんなに強い部ではなかったんですけど、「みんなで頑張ろう」っていう熱量がすごくあって、コンクールにも出ていました。4人1組になって出るアンサンブルコンテストで地区の銀賞が取れたのは、いい思い出です。女の子同士の友情はありましたね。
「3A」の泣きの芝居が話題 周囲からの反響は?
――作品では、ロケ地の長野県千曲市の風景の美しさも印象的です。
福原:千曲市のロケは、何もかもが楽しくて! 星もきれいだし、空気も澄んでいて、温泉においしい食べ物もあって。お休みの日に、共演した井桁弘恵ちゃんとぶどう狩りに行って、シャインマスカットを食べに行ったり、美味しいステーキ屋さんを見つけて通ったり。あんずも名産で、作品にあんずジャムパンが出てくるんです。それもとても美味しいんですよ!
――オフのときは温泉にも?
福原:行きました! (佐藤)大樹君なんて、1日に5回も入っていたみたいです。「ふやけちゃうよー」って言ったら、「でも、気持ちよかったんだー」って。私も(井桁)弘恵ちゃんと撮影終わりやオフの日は、ふたりで行きました。気持ちよかったですね。街にも、温泉の硫黄のにおいがただよっているんですよ。癒やされて、美味しいものもたくさんあって……。健康になれそうな場所です。
――和気あいあいとした現場だったんですね。鈴木仁さんや大原優乃さんはテレビドラマ「3A」でも共演されています。そういった意味でのやりやすさはありましたか?
福原:2人がいて心強かったです。(鈴木)仁君は一番話しやすくて、休憩中もトランプとか、子どもみたいな遊びを一緒にやって楽しんでいました。(大原)優乃は、雑誌「ピチレモン」のお仕事をやっていたときからの長い付き合い。『4月の君、スピカ。』で初共演して、その後、「3A」での共演が続いて、「本当にうれしいね」って言い合っていました。「3A」の撮影中は、優乃が休みの日にお泊りに来たことも。支えてもらいました、すごく。
――「3A」では、“泣き”のシリアスな演技が話題に。反響はありましたか?
福原:先輩や、お仕事でご一緒するスタッフさん、いろんな方から連絡をいただいて、「見たよー!」「すごくよかった!」って言ってくださって。(「3A」の主演)菅田(将暉)さんも生徒役のみんなも「いいものを生み出そう!」っていう想いでやっていました。全力の表現が、皆さんに「よかった」と言ってもらえたのは、とてもうれしかったです。
今、演じてみたいのは“家族もの”
――活躍の幅が広がっていますよね。今後やってみたいことはありますか?
福原:今は、“家族もの”をやってみたいんです。映画でもドラマでもいいんですけれど、家族愛が描かれていて、あったかい気持ちになるシーンをたくさん演じてみたい。私自身、家族がすごく好きで、親戚みんなで集まるくらい仲がいいので、そういう部分を表現してみたいなって。切ないんだけど愛があって……そういう家族を描いた作品がすごく好きなんです。
――家族を描いた作品で、とくに好きな作品はありますか?
福原:私、朝ドラ(NHK総合の連続テレビ小説)が好きです。なかでも、井上真央さんが主演された「おひさま」がすごく印象に残っています。物語に描かれているのは家族のことだけではないんですが、すごく愛があって、井上真央さん演じる陽子っていう女の子がいつも笑顔でみんなを明るく照らしている。陽子がみんなのために頑張っている姿や、人と人との間に生まれる愛情がすごくすてきだなと思ったので。「おひさま」が、自分自身がお芝居をやりたいなって思ったきっかけなんです。
――朝ドラに出てみたいですか?
福原:出てみたいです! すごく憧れますね。しかも、朝ドラのオンエアは半年です。そんなに長い時間、同じ役をやることは他の作品ではないので、やってみたいです。
――『4月の君、スピカ。』公開を待っているファンの方へメッセージをお願いします。
福原:私自身、この作品から、恋のすばらしさや、自分が持っている想いをちゃんと大切な人に伝える大事さを感じました。それを皆さんに届けたいと思っています。ぜひこの作品を見て、自分の大切な人に悔いのないよう、想いを伝えてもらえたらうれしいです。長野県千曲市で撮影した風景は本当にきれいで、原作と近い雰囲気があります。星空もとてもすてき。ぜひ大きなスクリーンで見て、楽しんで、癒やされて帰ってほしいなと思います!
ストーリー
17年間、地味で暗いと言われ続けてきた平凡女子・早乙女星。東京から長野の高校へ転校が決まり、リセットしようと張り切るものの、うっかり空気読めない発言をしてしまう……。落ち込み星に声をかけてきたのは、天文好きで無口な好青年・大高深月だった。「早乙女星…乙女座の星・スピカと同じ名前だ」と語る深月に、星は恋に落ちる。深月の誘いで天文部に入部した星は、ちょっと意地悪で強引な学年トップの秀才・宇田川泰陽とも接近。最初は星と反発し合っていた泰陽だが、ケンカしながらも何かと目が離せない星への恋を自覚していく。そんなとき、泰陽の元カノ・天川咲が転校してくる。夜空に輝く大三角形のように、互いを想う引力で身動きができない3人の恋の行方は……。天体観測ロマンチック・ラブストーリー。
テキスト:仲川僚子
写真:mayuko yamaguchi
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